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長谷川新多郎の備忘録。最近は写真中心。


by phasegawa
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ユニクロ作り直し

キオスクで柳井正氏の大きな顔を発見し、『日経ビジネス』を買う。2002年11月に社長の椅子を、小学校から慶応→旭硝子→MBA→IBMというスーパーエリートの玉塚氏に譲ったものの、3年経たずして自らの復帰、何があったんだろうと思っていた。

「ダメな組織になっているな、と思った。機能別組織では、それぞれ相談する必要があるので、プロジェクトのような形にしても、結局、誰が責任を取るか、全く見えないし、1人も取ろうとしない。だから、もっと組織自体を細分化し、個人で責任を取れるようにする。トップ以下そうしないと。(機能別の役割分担により)全体を強くしようと思うと、1つずつは弱くなるんですよね。全体最適ばかり考えて。いや本当にそうならいいが、自分の機能最適を考えるから結局、誰も全体のことに関して責任を取らなくなる。」

売上が落ちたとか、赤字転落したという訳ではまったくない。直近期でも、3600億円売って、15%の経常利益を稼ぎ出しているのである。しかしながら、この数字は2010年1兆円を目指すための計画を下回るものであり、柳井氏が満足できる結果ではなかった。

先月5日、帝国ホテルでの事業戦略会での資料。新社長の事業構造改革は、再ベンチャー化、グローバル化、グループ化がポイントになっている。より具体的には、大企業体質化した現状の全面否定、世界一へのこだわり、M&A戦略が柱である。大企業体質について更に触れると、店長よりも店舗をサポートする本部のスーパーバイザー希望者が増えるなど、挑戦と失敗を恐れる保守化の傾向、中途採用者が即座に力を発揮できない、社歴による序列意識の蔓延の風潮などである。

前社長玉塚氏の処遇について、当初柳井氏は、自分が国内事業の先頭に立つ代わりに玉塚氏には欧州市場を見てもらいたかったらしい。玉塚氏が家庭の事情から欧州転勤を断ると、今度はM&A担当を依頼したそうだが、同氏は「自分の力を試したい」と固辞した。そして、前社長はブロードバンドタワーという会社に再就職した。

安定的成長を求めた玉塚氏に対し、「成長なくば死も同然」と貪欲に成長スピードにこだわる柳井氏。幹部も社員も出入りが激しく、昇格、降格が日常茶飯事、毎年260人前後雇って200人が去っていく。平均年齢は未だ20台。働きたくない、キツイ会社の典型ではないかとも思うのだが、私は『一勝九敗』とか『プロフェッショナルマネージャー』とか、柳井氏関連の著作はかなり好きなのだった。身の程知らずに何度か本人宛にラブレターも書いたことがあるのだが、未だ直接会う機会にはめぐまれていなかった。

前述の事業計画においては、今期の売上はユニクロ海外で50億円、新規事業で500億円、FRグループ計で4900億円とある。これが、2010年においては、ユニクロ海外で1000億円、新規事業で3000億円で、グループ売上1兆円の4割近くをこれからの新事業で売上を作ろうというのである。増加分の年商と同額程度の買収資金を用意するにしても並大抵に実行できることではないだろうが、さしあたり新社長のこのプランを受けて株価は大きく上昇している。

「高いハードルを設けて、そこに到達する方法を考え抜くこと。これが会社や個人の成長につながる。目標を作ってそこを目指さない限り、到達できないし、目標がない限り衰退すると思いますね。単一事業からグループ化するというのは、ユニクロ自体小さく分けていき、より大きなものを展開できる体制にすること。どうすれば1兆円になるのか。自分ならどうするのか。社員と経営者への問いかけです。」

切込隊長は著書のなかで、ユニクロのことを「真面目に受験して田舎から出てきた学生が、都会の洗練された勘違い女に騙される的な」と皮肉っていた。現実にカッコ悪い失敗事例には事欠かない。ファミクロ、スポクロ、ニューヨークデザイン子会社、英国出店、野菜販売、等々。今秋出す、銀座の450坪ユニクロと19坪下着専門店、東武池袋内300坪ユニクロ、UNIQLO KIDSだってどうなのか。上海やロンドンの目抜き通りで見たユニクロはやはり日本の店構えにそっくりで、嬉しくて恥ずかしい気分にさせられた。
強烈な経営者による壮大な挑戦。どうにも気になって仕方がない。
by phasegawa | 2005-10-04 05:35 | business