長谷川新多郎の備忘録。最近は写真中心。


by phasegawa
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『下流社会』

モノからコトへの時代に求められるのはストーリーテラーの才能だろう。藤野さんもえらく推奨していたが、マーケターならでは、ポイントの抉り出しと展開の巧さを感じた。本書の大半が政府が行なった国民生活における階層意識の世論調査の結果を基にした著者の考察なのであるが、ふ~ん、と納得させられる話が多かった。以下、一部を要約して引用。
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自分が上中下のいずれの階層に属するか、というアンケート調査において、全世代の中でこの10年、特に団塊ジュニア世代の階層意識がどんどん低くなっている。社会人になるまでの間、バブル景気の豊かな消費生活に酔い痴れた身には無理もないことと考えられる。

「成果主義、能力主義」に肯定的な人は、男性では階層意識が下の人ほど、女性では階層意識が上の人ほど多く、「年功序列、終身雇用」には男女とも「中」意識の人ほど肯定的で全体では女性の方がより強く否定的となる。正規職員を中心とする「上」においては無能な上司や男性の壁を破るために、非正規職員を多く含む「下」においては正規職員との差別をなくすためであろう。

企業の行動で言えば、「いつかはクラウン」が高度成長期のトリクルダウン型消費にはフィットしていたが、今日の階層化社会では、「いきなりレクサス」のマーケティングとなる。カップラーメンも年収700万円以上向けの健康志向のものと年収400万円未満向けの100円で買えるものに二極化される時代。

階層固定化を防ぐべく完全な機会均等社会を実現したら結果の差はすべて純粋に個人的な能力に帰せられるかもしれないが、それはそれで過酷な社会ではないか。究極的には、頭の悪さや無気力の原因を遺伝子に求めることになる。近年のテレビ番組の脳ブーム、IQブームはそうした優性思想をオブラートにくるんだものと言えないこともない。

機会均等よりも機会悪平等を回避できるとよい。そのためには国立大学の学費を安くする、大学の授業のネット配信、地方出身者への資金援助などが考えられる。また、ノブレス・オブリージュの意識をもっと醸成させ、「上」の人から寄付を募るべきであろう。
--(引用終わり)
明解な類型化や上・中・下の階層化が説明され、いかにもなキャッチフレーズも満載、メディアや投資家向けにむしろ事態を煽動している感があるのだが、こういうストーリーを強引にでも作ってしまうことが商売になる。現に本書は9月の発売から2ケ月で紀伊国屋全店で1万冊超の実売を上げている。もう30万部位刷っているだろうか。

一部、悪乗りを感じさせる内容への批判も、結論部で大学への依存心が強すぎるとの指摘も、もっともと思った。年の初めに読んだ『希望格差社会』同様、「提言」よりも「煽り」の本にも思えなくもない。内田さんは、保守政治やジェンダー論に対する階層間意識差に反応していた。

およそこういう本は、読者の商売のためではないとしたら、自分は下流や下層じゃない、と確認して安心したかったり、下流の連中(イマドキの若者?)には困ったものだと、大人が溜飲を下げたいために読まれるものかも知れない。自分にとって縁遠いよりは、明日は我が身的な危機感を喚起する感じがあるといいのだろう。その点、私の場合は、本書冒頭の下流度チェックによれば、以下の通り、どっぷり下流に浸かっているのであった。(半分以上あてはまったら「下流的」らしい。)

・年収が年齢の10倍未満だ。・・・× 正しくは「10万倍未満」ということか。
・その日その日を気楽に生きたいと思う。・・・◎
・自分らしく生きるのがよいと思う。・・・◎
・好きな事だけして生きたい。・・・◎
・面倒くさがり、だらしない、出不精。・・・◎
・一人でいるのが好きだ。・・・◎
・地味で目立たない性格だ。・・・◎
・ファッションは自分流だ。・・・○ ダサさを容認する意味で。
・食べるのが面倒くさいと思うことがある。・・・○ 胃がもたれてラッキーと感じることもある。
・お菓子やファーストフードをよく食べる。・・・△ 前者は食べないが、後者は好き。
・一日中家でテレビゲームやインターネットをして過ごす事がよくある。・・・△ ゲームは殆どしない。
・未婚である(男性で33歳以上、女性で30歳以上。)・・・×
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by phasegawa | 2005-12-03 22:27 | review