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長谷川新多郎の備忘録。最近は写真中心。


by phasegawa
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『ソフトウェア企業の競争戦略』

ストラテジー研究のための課題図書。ポイントと思しき部分を一部要約して抜粋。

◆ソフトウェア企業の戦略の基本を考えるにあたっての選択
1.主として製品企業なのか、サービス企業なのか?
製品の標準化がどこまで可能か。製品企業は時間の経過と共にサービス企業になることが多い。サービスは製品より儲かりにくいが、不況や市場の成熟化が進んだ場合は、サービス&メンテ収入の獲得が必然になる。製品企業は、サービス企業との中間にあるハイブリッド・ソリューションという業態に行き着き易い。
2.ターゲットは個人か法人か、マス・マーケットかニッチ・マーケットか?
世界市場は北米50%、欧州31%、アジア15%。個人向けの標準化製品は、書籍出版に似て、ヒットすれば莫大な利益となるが、続編やアップグレード製品を売るのは難しい。法人向けは教育、コンサル収入に繋がったりで、売上は大きいが、コストも大きい。マス・マーケットをターゲットとするのは合理的だろうが、たいていはニッチプレイヤーになる。
3.製品またはサービスは、どの程度水平的(広い)か垂直的(特定業種へ特化している)か?
定期的に自社製品を再評価し、単体で売るのか、複数一体のパッケージで売るのか、また、提供範囲が適正かどうか判断すべき。水平型市場でのヒットのためにまず垂直型市場で足がかりをつかむ必然性はある。単独で生き残れない弱い製品は、無駄に抱き合わせて生き残らせるべきでない。
4.好不況にかかわりなく入ってくる継続的な収益源は確保できているか?
サービス売上が安定をもたらすが、サービス収益のエンジンになるのは製品販売である。製品とサービスの境界を曖昧にする、レンタルのようなアイディアも試みられている。
5.メインストリーム市場の顧客をねらうのか、「キャズム(溝)」を回避しようとするのか?
キャズムは、アーリー・アダプター(先駆者)とアーリー・マジョリティ(早期購買多数層)との間にある。キャズムを乗り越えてメインストリーム市場で成功するためには、「製品中心主義」から「市場中心主義」にマーケティングを切替えなければならない。ニッチプレイヤーであれ、自社が属する市場の業界標準のポジションを獲得し、マーケットリーダーにならねばならない。
6.目指すのはマーケットリーダーかフォロワーか、それとも補完製品メーカーか?
たいていの企業はフォロアーを選択し、補完製品メーカーとなる。
7.会社にどのような特徴をもたせたいのか?
戦略立案には自社をどのような組織にしたいかについての具体的な意思決定が必ずついて回る。

◆同期安定化プロセスを確立させたマイクロソフトの開発戦略の指針
1.大きなプロジェクトを、複数の中間目標の連続体に分割し、それぞれに予備期間を設ける(プロジェクト全体に必要な時間のおよそ20-50%)。製品メンテナンスのための別のグループは設けない。
2.プロジェクトを方向づけるために、マーケティングの専門家でもある製品リーダーが開発目標と概略機能仕様書を利用する。創造的な人材を集めるよりも、創造性を方向づけることの方が重要。
3.ユーザーの活動とデータに会わせ、基本機能を選択し優先順位づけを行なう。仕様書の機能は最後には30%以上が変更される。段階的な開発やリスクを評価し、管理する手順に戦略を持たずに技術的挑戦を続けると破滅に向うことがある。
4.モジュール式および水平型アーキテクチャを発展させる。製品構造をプロジェクト構造に反映させる。モジュール間の相互依存を低くすることで、チーム編成を小さく、同時並行作業が可能になる。
5.小さな作業に対する各人の責任分担とリソースを固定化し、プロジェクト管理を単純化する。プロジェクトは毎日・毎週の単位で厳しくチェックされ、同期化される。

◆起業に向けての成功条件
1. 強力な経営陣
強いチームであることの1つの要素はメンバーの経験水準、もう1つは人材の幅。
2. 魅力的な市場
高い参入障壁があったり、競合が存在せず、価格競争を避けられること。
3. 顧客をひきつける新しい製品、サービス、ハイブリッド・ソリューション
客観的な評価基準で、他社製品より格段に「よい」とどれだけ言えるか。
4. 顧客が関心をもっているという強力な証拠
クライアントの実際の購入意向を示す注文書や仮契約書があるか。
5. 「信頼性ギャップ」を克服するための計画
スタートアップ段階の企業の90%は失敗すると見なされてという常識を覚悟したほうがいい。
6. 初期の成長と利益を生む可能性を示すビジネスモデル
長い目で見て欲しい、は甘い。短期と長期のバランスが必要。
7. 戦略と提供する商品の柔軟性
「今日の市場で我々はカネ儲けをしなければならないが、そのための最良の方法は何か?」
8. 投資家に対する大きな見返りの可能性
一般的には7年以内に25%以上の投資収益率。IPO前提の事業計画が望ましい。
by phasegawa | 2005-09-14 00:01 | review