長谷川新多郎の備忘録。最近は写真中心。


by phasegawa
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売る人の言い分、作る人の言い分

総じて出版社において編集部と営業部の意見は対立しがちなものらしいが、当社においてよく聞かれるのは、以下のようなところが代表的な意見だ。

[営業から編集に対しての要望]
・売れる本を遅れずに出して欲しい。
・大量の新刊が発売されている中での書棚での置かれ方を考えて欲しい。
・新刊の情報は早く知らせて欲しい。
・いつの間にかタイトルや定価が変わったりするのは困る。
・どういう経緯でその本を出すのかわからないことがある。
・原価や損益分岐はどうなっているのかはっきりした時点で教えて欲しい。
・読者のことを把握しているのは編集のはず(だから、編集者がどういう本が売れるか考えて欲しい)。

[編集から営業に対しての要望]
・企画に意見を言ってくれない。営業発の企画はないのか?
・企画に注文があるならば、早い段階で言って欲しい。
・自分が言ったこと、メールしたことはちゃんと頭に刻み込んで欲しい。
・わからないことがあるなら、そのままにせずに何でも質問して欲しい。
・それくらいのことは教えなくても知っていて欲しい。
・皆の前でいくら損したと晒されるプレッシャーの重さをわかってくれているか。
・消費者のことを知っているのは営業のはず(だから、営業マンがどういう本が売れるか教えて欲しい)。

どうしてこのような対立が発生するのか。理由はこんなところか。

・売れる本の企画を考えることは誰にとっても実にむずかしい。
・自分の意見を説得力のある形で説明すること、わかりやすい文書にすることは手間や時間がかかり、面倒。
・自分の常識と他人の常識は結構食い違う。
・自分の既知・未知、可能・不可能を自覚すること、他人に伝えることはなかなかできない。
・ミーティングする場が足りない。
・ミーティングしても準備不足で時間を有効に使えない。準備しようにも時間が足りない。
・一度動き始めたプロジェクトを途中で軌道修正するのは骨が折れる。
・動き始めたようでも予期せぬアクシデントが次々発生する。

なにも当社に限った話ではないように思うのだが、はっきりしているのは、同じ会社という運命共同体に在籍して役割分担をする以上、誰かを非難したところでその行為自体では儲からないのである。逆に、素朴な発言のつもりが、相手の感情を逆撫でさせてコミュニケーションの断絶という最悪の事態を招きかねない。

なぜ意見の対立が発生しがちであるのかをよく理解し、他人にこうしたありきたりの不満を簡単に言わせまいと厳しく自らに言い聞かせること。むしろ、人と人との思惑の食い違いが発生しがちな場所にこそ、チャンスがあり、頑張りがいがあるのだと前向きな姿勢を持つこと。各人のそうした心掛けが強い組織を作るための一歩だ。

それには、自分を反省し、しつこく自問自答できる謙虚さが必要である。ただし、謙虚がいいからと言って、自分が思ったことを遠慮し過ぎて言わなかったり、相手と面と向かって議論することを臆病がったり、そもそも会話に論理性が欠けているようでは、これまたプロジェクトの質を落とす原因になりかねない。

コミュニケーション力に長けた強い組織においては、売る側と作る側が各々の立場を深く承知していることに加え、両者を合わせたところの会社組織が、製品を買う側であるところの「市場」のことをもよく把握できていることであろう。
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by phasegawa | 2005-03-19 23:22 | business